提言! 変わらない海事社会を変えるために

冨久尾義孝(日本海洋科学社長)著
A5・168頁・定価(本体1,800円+税)
ISBN4-303-11520-7
初版2006年7月発行


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 概 要
2003年夏より始まった中国特需に伴う海運市況の高騰により、海運業界はいま、ほぼ30年ぶりの好況に沸いている。しかし、これを海事社会の再生と見て、この傾向が将来も長く続くとは、おそらく関係者の誰もが考えてはいないであろう。

大戦後1960年代にかけて我が国の海事産業は全盛期を迎えた。日の丸船隊は世界の港を制覇し、我が国造船の建造量は全世界の半分を占めた。状況が大きく変わったのは1980年代に入ってからである。とくに1985年のプラザ合意による円高は外貨建産業を直撃、海事社会の状況を一変させた。

最大の被害産業は海運と造船であった。その中でも、とりわけ大きな影響を受けたのが日本人外航船員である。最大時6万人を越したその数は、時を置かずして3000人規模にまで激減した。これは石炭産業の激変ぶりに匹敵する。不況の中、人材の流出が相次ぎ、それがまた業界の力を削ぐという悪循環が続いた。その結果、海事社会は全体が大きな閉塞感に覆われることとなる。

事態打開に向け、さまざまな試みがなされ20年が経過したが、未だ閉塞感から脱却したとの認識は関係者にない。むしろ、このような状況を放置すれば人材流出は加速され、やがて海事産業はさらなる衰退に向かう恐れすらある。

いまもって2000隻を超える外航船を支配する我が国は英国と並んで世界有数の海運国である。また、造船においても未だ世界の1/3の船舶を建造する造船大国であることは変わらない。海事産業全体の年間生産高を正確に述べることは困難であるが、海運の約4兆円、造船・舶用工業の約2兆円から推定して我が国GDP 500兆円の数パーセント規模と思われる。

したがって、今後もしこれだけの規模を持つ産業が放置され、再生の機会が失われるとすれば、それは国民経済上も大きな損失のはずである。

国家の産業構造はできる限りバランスのとれた構造であることが望ましい。なぜなら産業には必ず浮沈があることから、特定の産業に過度に偏ることは国家運営上リスクが大きいからである。

このような観点に立ったとき、海事産業の再生は我が国にとって極めて重要であり、今後早急に取り組まねばならないテーマであると言える。

元来、四囲を海に囲まれた我が国は立地的にも歴史的にも海事分野の産業を得意とし、その発展によって国家を支えてきた側面を持つ。したがって、我々が今後、海事産業の衰退をこのまま放置するとすれば、それは国家百年の計を誤ると言っても過言ではないのである。

本書はこうした背景の下、我が国海事産業ひいては海事社会の再生を図ることを目的として書かれた著者の学位論文「次世代に向けた新しい海事社会の構築に関する研究」を書籍化したものである。(「はじめに」より)
 
 目 次
第1章 本書の目的
     1.1 用語の定義
     1.2 本書の目的と概要

第2章 外航船員の現状
     2.1 概説
     2.2 外航船員数の推移
     2.3 年齢構成
     2.4 勤務形態の変化
     2.5 船員費比較
     2.6 海運業の機能分化
     2.7 まとめ

第3章 日本人船員に対するニーズ
     3.1 概説
     3.2 アンケートの実施
     3.3 アンケート結果
     3.4 船社の海上社員要員計画
     3.5 パイロット後継者
     3.6 Super Intendantの不足
     3.7 陸上職域における海技者のニーズ
     3.8 まとめ

第4章 海事社会の抱える問題点
     4.1 概説
     4.2 船員の質の低下
     4.3 海事クラスターの縮小
     4.4 海事制度の硬直化
     4.5 まとめ

第5章 欧州海事社会の現状
     5.1 概説
     5.2 調査対象地域と訪問先
     5.3 ノルウェーにおける海事社会の現状
     5.4 ノルウェーにおける海事社会の将来動向
     5.5 英国における海事社会の現状と将来動向
     5.6 欧州域における海事社会の現状と将来動向
     5.7 欧州調査のまとめ
        5.7.1 船舶職員の不足
        5.7.2 海技者の能力と競争力
        5.7.3 職員不足に対する対策
        5.7.4 船舶管理業
        5.7.5 海事教育
        5.7.6 海運政策
        5.7.7 陸上職域
        5.7.8 行政職域への海技者の参入
        5.7.9 行政との一体感
     5.8 まとめ

第6章 望まれる新しい海事社会の姿
     6.1 概説
     6.2 新しい海事社会の姿
     6.3 海事制度の再構築
     6.4 新しい海事社会における海事専門家の養成
     6.5 新しいビジネスモデルの創造
        6.5.1 ターミナル業の世界進出
        6.5.2 船舶管理業の育成と世界進出
        6.5.3 外国人船員養成のビジネス化
        6.5.4 船舶運航のビジネス化
        6.5.5 海運の積取りシェア増大策の検討
        6.5.6 海運アジア連合の確立
     6.6 まとめ

第7章 提案の実効性の検証
     7.1 概説
     7.2 海事コンサルタント業創設の経緯
     7.3 海事コンサルティング手法の開発
        7.3.1 船舶航行実態調査手法の開発
        7.3.2 操船シミュレータの導入
        7.3.3 安全評価手法の開発
        7.3.4 考察
     7.4 海事コンサルティングの実例
        7.4.1 実態調査業務
        7.4.2 港湾設計の安全性評価
        7.4.3 架橋計画における橋脚幅の検討
        7.4.4 民事裁判への関与
        7.4.5 考察
     7.5 N社の社会活動
     7.6 コンサルタント業の採算
     7.7 海事コンサルタント業の将来展望
        7.7.1 マーケットの将来性
        7.7.2 今後の問題点
     7.8 まとめ

第8章 結論
     8.1 結論
        8.1.1 基礎資料の収集
        8.1.2 我が国海事社会の抱える問題点の整理
        8.1.3 欧州海事社会の現状分析
        8.1.4 望まれる新しい海事社会像の提案
        8.1.5 提案の実効性の検証
     8.2 今後の課題


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