[CUPSシリーズ2]
熱・統計物理学シミュレーション
(DOS/V用ソフト付)


Harvey Gould・Lynna Spornick・Jan Tobochnik 著
尾中龍猛(筑波大学名誉教授) 訳
B5・176頁・4,600円/ISBN4-303-55620-3
初版1996年6月発行


【注】Windows98以降では、多くの場合動作しません。ご注意ください。

 概 要
この本のシミュレーションはパソコンの能力を活用して講師や学生に物理学を教え学ぶ新しい機会を提供し、極めて重要な体感を育てるのに役立たせることを目的としている。テキストは読まずにプログラムを使うこともできるが、この本はその基礎となっている物理を理解し、その上でプログラムをいろいろと利用する方法のヒントを提供している。

我々はこの本に書かれているコンピュータプログラムを指すのに「シミュレーション」という用語を使っている。この用語はいろいろな物理的システムのモデルの、複雑なしばしば実際的な計算を行い、その結果をグラフィカルな(しばしばアニメーションとして)画面で出力することを含むプログラムを指したつもりである。シミュレーションの多くは数値的な出力、時には他のプログラムで解析するための出力ファイル形式のものを出すこともできる。ユーザは通例システムの各種パラメータを変更することができ、そうした場合システムがどんな動きをするかをリアルタイムで学ぶことができる。
 
 実行できるシミュレーション
ENGINE (自分自身のエンジン設計)
エンジン・サイクルの諸過程(断熱、等圧、等積(容積一定)および等温)、エンジンの型(可逆および不可逆)、そして気体の種類(ヘリウム、アルゴン、窒素あるいは水蒸気)を決めて、ユーザにエンジンを設計させるプログラム。各過程における熱力学的性質(交換される熱量、なされる仕事、内部エネルギーの変化)と、エンジンの効率が計算される。

DIESEL、OTTOおよびWANKEL
これらの型のエンジンそれぞれのアニメーションを示す。エンジン・サイクルに対して、各時点での熱力学的条件が示されるとともに、温度とエントロピーの関係や、圧力と体積の関係がプロットされる。

GALTON (ゴールトン板)
伝統的ゴールトン板か、あるいは落とし穴、反射および(あるいは)吸収壁を持った特製のゴールトン板のモデルである。GALTONは、2項分布や正規分布、確率の法則および中心極限定理を説明する。

POISEXP (原子核の崩壊におけるポアソン確率分布)
ポアソン分布と指数関数分布を表すために、放射性原子の崩壊現象を用いている。

TWOD (2次元ランダム・ウォーク)
2次元のランダム・ウォークのモデルである。1人の酔っぱらいが歩幅を同じにして、2次元の格子上、または平面上でランダムな歩行をする。TWODは、独立な2つの過程の合同確率、2項分布およびレイリー分布を説明する。

KAC (カクの輪)
カクの輪を用いて、運動方程式を解くことができ、時間反転にしたがい、ポアンカレ・サイクルを持っているような大きな力学系が、統計的なモデルによっても記述できることを説明する。

STADIUM (スタジアム・モデル)
スタジアムの模型を用いて、運動方程式を解くことはできるが、系のカオス的な性質によって、運動の先行きを予想できないような力学系が存在することを説明する。

ISING (1次元および2次元のイジング・モデル)
4種のモンテカルロ・アルゴリズムと3種の集団を用いた、1次元および2次元のイジング・モデルの静的および動的な性質を明らかにする。メトロポリス・アルゴリズムを選ぶと、温度と外磁場が一定に保たれているときのイジング・モデルの研究をすることができる。スピンの配向は、全エネルギーおよび磁化の強さの進展とともに画面に表示される。平均エネルギー、磁化、比熱、および感受率が標本とされたスピン配置の数の関数として観察される。上記以外の計算量としては、平衡状態の平均エネルギー、磁化自己相関関数やエネルギー・ヒストグラムがある。このプログラムの助けによって研究できる重要な物理的概念としては、ボルツマンの確率、臨界点近くでの系の定性的ふるまい、臨界指数、繰り込み群や臨界減速現象がある。ユーザが選ぶことのできる他のアルゴリズムとしては、スピン交換力学(磁化一定)、エネルギーを一定に保つデモンのアルゴリズム、単一クラスタのウォルフ(Wolff)の力学がある。後者は、臨界点での平衡状態スピン配置をつくる場合に、とくに役に立つ。

MANYPART (多数粒子分子力学)
分子力学(エネルギー一定、体積一定)か、モンテカルロ法(温度一定、体積一定)か、どちらかを用いて、2次元における高濃度気体、液体、もしくは固体をシミュレートすることができる。剛体円盤でも、レナード-ジョーンズ相互作用のある場合でも、どちらも選ぶことができる。粒子の軌道は、系の進展に応じて示される。監視される興味深い物理量としては、圧力、温度、比熱、2乗平均偏位、速さおよび速度の分布、そして対粒子相関関数がある。このプログラムの助けによって研究できる重要な物理的概念には、マクスウェル-ボルツマン確率分布、ゆらぎ、状態方程式、相関、およびカオス的混在の重要性がある。

FLUIDS (液体の熱力学)
ファンデルワールス・モデルと水に対する流体(気体および液体)相図を明らかにする。ユーザは、PT、Pv、vT、uT、ST、uv、Svの組み合わせの中から4種を選んで相図をつくることができる。ここでPは圧力、Tは温度、vは比体積、Sは比エントロピー、そしてuは比内部エネルギーである。このプログラムは、ファンデルワールス・モデルと水の共存状態の表を読み取り、それを水の自由エネルギー、およびファンデルワールス・モデルによって導かれた、自由エネルギーに対する実験式と一緒に用いる。vとuが与えられると、どんな熱力学的量でも計算できる。ファンデルワールス・モデルの場合、熱力学的諸量は、他の熱力学的状態変数からも計算できる。ユーザは、1つの相図の中に1本の直線を描いて、その経路が他の相図ではどのように見えるかを知ることができる。また相図の中の任意の点で、重要な熱力学的データを取り出すことができる。

QMGAS1 (量子力学的気体−その1)
黒体放射の中のフォトン、理想的ボース粒子、デバイ理論におけるフォノン、相互作用をしないフェルミ粒子、これらの系の古典的限界などを含めて、量子理想気体の熱力学的性質を求めるのに必要な数値計算をする。ユーザは、統計の型(ボース-アインシュタイン統計か、フェルミ-ディラック統計か、あるいはマクスウェル-ボルツマン統計)、空間の次元数、分散関係の形(簡単な指数に限られる)、粒子の化学ポテンシャルがゼロかゼロでないか、そしてデバイの切断があるかないか、などを選択する。プログラムは、そのあとでエネルギー、比熱、そして温度の関数としての化学ポテンシャルを含む、熱力学的データの表を作成する。このデータや、いろいろな分布関数、それに状態密度がプロットされる。

QMGAS2 (量子力学的気体−その2)
有限なk空間(kは波動ベクトル)の中で、いろいろな状態間をふらふらしている、有限個の量子論的粒子のモンテカルロ・シミュレーションを行う。このプログラムは、可能なエネルギー状態を並べてエネルギー準位図をつくり、粒子がある状態から他の状態に移るとき、ボルツマンの確率分布則にしたがって動くことを示す。ボース粒子の場合には、エネルギー準位図で、互いに相手を通り越すことができないという制限があり、フェルミ粒子の場合には、この上さらに、2個の粒子が1つの準位に入ることができないという制限もある。古典粒子にはこのような制限はない。粒子の識別不可能性は、この方法で正しく満たされている。ユーザは、粒子の型、粒子数、k空間の次元数、および温度を選択する。シミュレーションをしている間に、状態の占有度の表示や平均エネルギー、瞬間的エネルギー、状態間のエネルギー分布がプロットされ、また平均エネルギー、比熱、基底状態の占有度の結果も示される。


理工学(物理・化学)のページへ
トップページ
ご注文はこちら