[CUPSシリーズ3]
固体物理学シミュレーション
(DOS/V用ソフト付)


Ian Johnston・Graham Keeler・Roger Rollins・Steven Spicklemire 著
尾中龍猛(筑波大学名誉教授) 監修
山崎昶(電気通信大学助教授) 訳
B5・200頁・4,100円/ISBN4-303-55640-8
初版1996年6月発行


【注】Windows98以降では、多くの場合動作しません。ご注意ください。

 概 要
この本のシミュレーションはパソコンの能力を活用して講師や学生に物理学を教え学ぶ新しい機会を提供し、極めて重要な体感を育てるのに役立たせることを目的としている。テキストは読まずにプログラムを使うこともできるが、この本はその基礎となっている物理を理解し、その上でプログラムをいろいろと利用する方法のヒントを提供している。

我々はこの本に書かれているコンピュータプログラムを指すのに「シミュレーション」という用語を使っている。この用語はいろいろな物理的システムのモデルの、複雑なしばしば実際的な計算を行い、その結果をグラフィカルな(しばしばアニメーションとして)画面で出力することを含むプログラムを指したつもりである。シミュレーションの多くは数値的な出力、時には他のプログラムで解析するための出力ファイル形式のものを出すこともできる。ユーザは通例システムの各種パラメータを変更することができ、そうした場合システムがどんな動きをするかをリアルタイムで学ぶことができる。
 
 実行できるシミュレーション
PHONONS (フォノンと状態密度)
いろいろな三次元結晶構造のフォノン分散曲線と状態密度を掲載し、画面に表示する。分散曲線の表示は、現実的な曲線を描くもので、最近接原子、第二隣接原子との原子間力が変化したときにどのような影響が現れるかがユーザにもよくわかるようになっている。二原子結晶構造の場合には、原子の質量比を変えたときの効果も見られる。状態密度の計算は、現実の複雑な形状の状態密度が、ずっと簡単な個々の分極モードに対応する分布の重ね合わせからどのように組み立てられるかを示し、ユーザに分散曲線上に現れるそれぞれに対応した様相と、分布の様子をマッチさせることが可能となるようにつくられている。取り上げられている結晶格子がはっきりと会得できるように、それぞれの結晶格子が三次元的に画面に投影されるように工夫されている。

SPHEAT (比熱の計算)
いろいろな理論的モデル(アインシュタインモデルやデバイモデルなどを含む)について、格子比熱の温度依存性を計算して表示する。また、現実的状態密度のコンピュータシミュレーションも可能で、ユーザは各自、状態密度に影響を与えるいろいろな重要なパラメータを変更してみてその結果を観察できる。このプログラムでは、原点付近の小さな領域を拡大して表示することもできる。また、Tの3乗の曲線をプロットして、ユーザに比熱の低温側の限界を調べさせることも可能となっている。つまり等価デバイ温度の形で、デバイモデルからのズレを調べることができる。ショットキー比熱異常も同様に調べられる。

LATTICE (一次元格子上の波動関数)
簡単なポテンシャル井戸(方形、放物線形、クーロン形)をいくつも(最大12個)並べた格子の中での電子のエネルギー固有関数を求めることが可能である。固有値を求めるには、手あたりしだいにやってみてもよいし、コンピュータに自動的に計算させてもよい。最初はまず規則的な格子からはじめるとよい。これは全部のポテンシャル井戸が同じ形で、一定の間隔で配列している場合である。これは規則的な結晶のいろいろな性質、とくにエネルギーバンドの存在などを示してくれる。次には井戸の幅や深さを変えたり、間隔を変えてみるといいだろう。これは結晶中の不純物の存在や不規則性をシミュレートしてくれる。最後に格子に外部電場をかけてみる。井戸の諸性質を変えたり、格子配置を変えたり、外部電場の大きさを変えたりすることも、好み次第でできるようなツールが準備されている。

BANDS (エネルギーバンド)
一次元の対称な周期的ポテンシャルで、形状や強度は任意に選べる系の中での電子のエネルギー分散曲線と対応する波動関数を計算し、容易に比較できるように画面に表示するプログラムである。この計算方法は厳密で非摂動論的であるから、エネルギー分散曲線とバンドギャップが、強度が大きな場合でもきちんと得られる。エネルギー分散曲線の中の望みの状態のところでマウスをクリックするだけで、対応する波動関数も表示できる。ポテンシャルの形状の変化に伴うバンド構造の変化も表示可能である。強度を変化させたときのバンドギャップの変化も計算可能で、きわめて弱い強度(摂動法)ときわめて強い強度(孤立原子系)の両極端と比較できる。経験に富んだ固体物理学の研究者にも、このプログラムで得られる結果の中には驚くべきものが含まれているだろう。この概念上はきわめてシンプルなモデルによる計算をもとに、きわめて重要な物理学の議論がクラスでわき起こる可能性もある。

PACKET (一次元格子中の電子波束)
外部電場の影響によって、金属や半導体の中で電子の波束が動くのをリアルタイムで計算し、かつその移動をアニメーションで表示するプログラム。時間を含むシュレディンガー方程式を外力の項を含む条件下で強束縛近似によって数値的に解き、波束の動きを直接求めている。このシミュレーションの弱点は、エネルギーバンドの頂部付近の状態から形成される電子の波束は、外力とは逆向きに加速されることである。これはマイナスの有効質量を持つのである! このシミュレーションは一次元格子中の運動を扱っているのだが、もちろん実際の三次元の結晶中の電子の運動にも応用可能である。波束の運動についての数値的実験からは、物理学上のさまざまな問題、たとえば一定の大きさの外部電場が与えられるとき、波束の運動にどのような影響を与えるか? あるいは通常用いられる半古典的なモデルがうまくいかなくなるのはどのような局面か? あるいは、元の格子の周期の二倍の周期を持った超格子のなかで、波束のダイナミクスはどのように変化するか? などの問題を探求することもできよう。

SOLIDLAB (自分だけの固体デバイスをつくってみよう)
半導体デバイスのシミュレーションプログラムである。デバイスをユーザ自身が設計して、自分でいろいろとシミュレーションをしながら諸特性の調整を行えるようになっている。デバイスの操作時に、電荷密度や電流密度、電位がどのように変化するかがユーザにも観察できる。

LCAO (LCAO近似の波動関数)
小さな二次元の原子クラスタにおいて、どのような相互作用が見られるかをシミュレートする。画面上で原子の大きさを変えたり、動かしたりすると、それに応じて原子の量子力学的波動関数は変化する。これらの原子クラスタの持つさまざまな性質が個々の原子の性質や、そのクラスタ内の幾何学的配置にどのように依存しているかを、自分で調べることもできる。


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