音声・聴覚のための信号とシステム
―問題・解答付―


スチュアート・ローゼン、ピーター・ハウエル 著
荒井隆行(上智大学理工学部講師)、菅原勉(上智大学外国語学部教授) 監訳
青柳真紀子、矢萩悦啓、徳間伸一、今富摂子 訳
B5・388頁・定価(本体4,200円+税)
ISBN4-303-61010-0
初版1998年8月発行/第3版2刷2005年3月発行

 概 要
音声科学・聴覚科学の分野で研究をしている人の多くは人文科学系すなわち文科系の出身であるため、この分野で必要とされる工学的な基礎知識について理解するのが難しい(その基礎知識とは、つきつめると線形システム分析ということになる)。

音声科学・聴覚科学の分野の勉強をする際に一番の障壁となっているのは、現在手に入るテキストのほとんどが工学系の学生を読者として想定しているということである。そういった学生はもうすでに電気回路理論や微分方程式に関してかなりの教育を受けている。そして現在手に入るテキストはそれを前提に書かれているのである。したがって十分な数学的専門知識がある読者でも、テキストから多くの情報を引き出すのはどちらかというと難しく、ましてや微積分学の知識のない読者にとってはほとんど不可能である。

実際、この本が主な対象と考えている読者(言語治療士、言語病理学者、オーディオロジスト、音声学者、心理学者を目指す学生)が、たとえばフーリエ変換の計算を手で行う必要は、ほとんどあるいはまったくといっていいぐらいない。しかし、フーリエ変換がどんなことをするのか、そしてフーリエ変換が音声生成や、末梢聴覚系、補聴器の働きにどのように適用されるのかということについては、十分に理解する必要がある。

この本では、音声科学・聴覚科学においてある種の役割を果たす「信号分析・システム分析」の概念をこと細かに読者に紹介したつもりである。数式はほとんど使わず、一貫して肩ひじの張らない、初心者にやさしい、わかりやすいスタイルにした。内容の説明には図を多用したが、本文の説明を忠実に表現するよう留意した。紹介する概念を最終的には視覚的にもしっかり理解してもらえるよう、できるだけわかりやすい、正確な図を載せるようにした。

この本は、スペクトルという用語を一度も聞いたことのない学生から、インパルス応答という概念をおぼろげながら理解しているような研究者まで、さまざまなレベルの読者を対象にしている。高等な技術的教育を受けた読者も基本概念の理解がより確実になるように、信号分析・システム分析の土台となる概念構造について明快に説明することを心がけた。(「序文」より)
 
 目 次
第1章 はじめに
     練習問題

第2章 現実の世界における信号
     2.1 音さの動き
     2.2 音とは何か
     2.3 圧力変動をより便利な形に変換する
     2.4 音響信号に戻す
     2.5 まとめ
     練習問題

第3章 信号とは
     3.1 正弦波の周波数と周期
     3.2 正弦波の仕組み
     3.3 三角法を使って1周期内の正弦波の振幅を測る
     3.4 位 相
     3.5 振 幅
     3.6 その他の周期信号
     3.7 非周期信号
     3.8 ピーク・ピーク値および実効値による振幅の測定
     3.9 振幅の測定−音圧振幅とインテンシティの関係
     3.10 尺度の定義
     3.11 インテンシティの尺度−デシベル値
     3.12 尺度の基準値
     3.13 比を対数で表す
     3.14 デシベル尺度のその他の特徴
     練習問題
     付録:指数と対数(底が10のとき)

第4章 システムとは
     4.1 比例性
     4.2 加算性
     4.3 線形性=比例性+加算性
     4.4 時不変性
     練習問題

第5章 プレビュー
     練習問題

第6章 システムの周波数応答
     6.1 振幅応答−基本概念
     6.2 比で表された振幅
     6.3 フィルタ
     6.4 並列システム
     6.5 縦続システム
     6.6 帯域通過フィルタ
     6.7 単純な物理システムにおける帯域通過応答
     6.8 縦続LTIシステムの振幅応答
     6.9 線形システムとしての声道
     6.10 位相応答
     6.11 線形位相応答
     6.12 ラップされた位相曲線とアンラップされた位相曲線
     6.13 その他の位相応答
     6.14 縦続接続された2つのLTIシステムの位相応答
     6.15 縦続接続されたLTIシステムの伝達関数
     練習問題
     付録1
     付録2
     付録3

第7章 信号の周波数特性
     7.1 正弦波を加える:合成
     7.2 周期波を分解する:分析
     7.3 のこぎり波のフーリエ級数
     7.4 のこぎり波の振幅スペクトル
     7.5 のこぎり波の位相スペクトル
     7.6 ある成分の位相を変えたときの影響
     7.7 ある成分の振幅を変えたときの影響
     7.8 ある成分が消失した場合の影響
     7.9 他の周期波形のスペクトル
     7.10 パルス波のスペクトル
     7.11 パルス幅を変えずに周期を変えた場合の影響
     7.12 非周期信号のスペクトル
     7.13 過渡信号のフーリエ変換
     7.14 ランダム信号
     練習問題

第8章 システムを通った信号
     8.1 周期信号をフィルタに通す
     8.2 処理をスピードアップする
     8.3 周期信号を現実的な低域通過フィルタに通す
     8.4 非周期信号をシステムに通す
     8.5 歪みと理想的なシステム
     練習問題

第9章 システムの時間特性
     9.1 単一パルスに対するシステム応答から何がわかるか
     9.2 方形パルスで信号を近似する
     9.3 インパルス応答と周波数応答の関係
     9.4 システムの周波数応答を決定する実例
     練習問題

第10章 時間領域と周波数領域の関係
     10.1 方形パルスの持続時間とスペクトル
     10.2 正弦波の持続時間とスペクトル
     10.3 フーリエ変換と逆フーリエ変換の関係
     10.4 システムにおける時間領域と周波数領域の関係
     10.5 単純な帯域通過フィルタのインパルス応答と振幅応答
     10.6 異なる帯域幅の周波数解像度
     10.7 異なる帯域幅の時間解像度
     10.8 帯域幅vs.解像度−まとめ
     練習問題

第11章 サウンドスペクトログラフ:実用の短時間スペクトル分析
     11.1 基本問題:実世界の信号のスペクトルを求める
     11.2 中心周波数が調節可能な帯域通過フィルタを用いたのこぎり波の分析
     11.3 時間とともに変化する信号
     11.4 単一帯域通過フィルタを通過したチャープ音
     11.5 細部の除去:整流と平滑化
     11.6 まとめ:フィルタリング、整流、平滑化
     11.7 フィルタバンクを用いた周波数分析
     11.8 スペクトログラムを組み立てる
     11.9 スペクトログラムの表しかた
     11.10 スペクトログラフ
     11.11 セクション:短時間スペクトル
     11.12 フィルタ帯域幅の選択
     11.13 フィルタの中心周波数を動かしながらスペクトルを求める
     11.14 周波数が近接した2つのスペクトル成分の分離
     11.15 インパルスの広帯域スペクトログラムと狭帯域スペクトログラム
     11.16 時間が近接した2つのパルスの分離
     11.17 準周期的パルス列の広帯域スペクトログラムと狭帯域スペクトログラム
     11.18 不規則信号の広帯域スペクトログラムと狭帯域スペクトログラム
     11.19 その他の特徴
     11.20 まとめ
     練習問題

第12章 聴覚への応用
     12.1 外 耳
     12.2 中 耳
     12.3 基底膜の動き
     12.4 聴覚フィルタ
     練習問題

第13章 音声生成への応用
     13.1 音声生成の音源フィルタ理論
     13.2 一定の基本周波数における振幅スペクトル
     13.3 いろいろな周波数における振幅応答
     13.4 いろいろな周波数におけるサウンドスペクトログラム
     13.5 基本周波数が変化する母音のスペクトログラム分析
     13.6 他の母音の特性
     13.7 二重母音
     13.8 無声摩擦音
     13.9 まとめと一言
     練習問題

第14章 ディジタル信号とは、ディジタルシステムとは
     14.1 ディジタル技術は賛否両論
     14.2 アナログ信号とは
     14.3 ディジタル信号とは
     14.4 ディジタルシステム
     14.5 量子化
     14.6 標本化
     14.7 標本化定理
     14.8 複合信号の標本化
     14.9 ディジタル信号処理
     14.10 アナログ形式への再変換
     14.11 実用上の問題点
     練習問題

付 録
     A.1 練習問題の解答
     A.2 参 考
     A.3 図について
     A.4 さらに知識を深めたい人への推薦図書
     A.5 参考文献


関連書
   音声の音響分析 音入門 音声知覚の基礎
   言語聴覚士の音響学入門 臨床家のためのデジタル補聴器入門 聴覚過敏 よい聞こえのために

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