音入門
―聴覚・音声科学のための音響学―


チャールズ・E・スピークス 著
荒井隆行(上智大学理工学部助教授)
菅原勉(上智大学外国語学部教授) 監訳
B5・304頁・定価(本体3,500円+税)
ISBN978-4-303-61020-3
初版2002年11月発行/第2版3刷2007年2月発行

 概 要
人間の基本行動の中でも極めて大事な言語コミュニケーションの大半は音声を介して行われるが、その音声は音そのものに他ならない。話し手の頭の中にあるメッセージは、話し手の口から「音」として発せられ、その音は聞き手の耳に到達し、聞き手の頭の中でまた再びメッセージとして復元される。この一連の「ことばの鎖」において音はその中心的な存在であり、音を理解することが音声コミュニケーションを理解することへの第一歩となる。

我々はこれまでに『音声の音響分析』『音声・聴覚のための信号とシステム』と2冊の翻訳を手掛けてきたが、それらの原書本のいずれもが音声や聴覚にかかわる入門的な教科書であり、世界各国で音声・聴覚を志す学生や研究者に広く読まれている。本書はそれに続く第3冊目であり、本書の原書版は、やはり音声・聴覚、とくに言語病理学を志す学生を対象に、「音」そのものに関する物理学的な側面を中心に、文系研究者にもわかりやすく書かれている。従来の音響学の専門書のように難しい物理学の数式などをなるべく使わず、それでいてなるべく物理学の真実に迫るべく忠実な記述を目指している。

本書のテーマである「音」は、いままでの2冊ではあまり強調されてこなかった分野を取り扱うもので、本書と既訳の2冊を併用することによって、音声・聴覚研究を取り巻く重要なテーマをほとんど基礎からカバーすることができるようになると信じている。

最近の音声研究には、そこに機械があるから、そこに分析ソフトがあるからというだけで、音響分析を採り入れる傾向が強い。音の何たるか、分析値と音声の実現形との本質的な関係について考慮することなしに論文発表が行われている。結局、音のqualityそのものを扱う論文は比較的少なく、安易(と利用者たちは誤解しているのだが)にfundamental frequencyの変化とdurationの数値のみを求めるという分析方法が行われることになる。本書をはじめとする基礎物理の参考書により、音に関する基礎理論を学習することの重要性を再確認する意味でも、本書の通読を強く要望する次第である。(「監訳者のことば」より)
 
 目 次
第1章 音波の性質
     1.1 媒質の特性
     1.2 音源の特性
     1.3 媒質に作用する音源
     1.4 基本物理量
     1.5 組立物理量
     1.6 ばね質量系の振動
     1.7 振り子:ゆっくり動く振動の例
     1.8 比例性
     1.9 音波の伝搬
     1.10 波動の種類
     1.11 音波
     1.12 エネルギの移動
     1.13 よく誤解される概念

第2章 単振動
     2.1 波形
     2.2 単振動の概念
     2.3 sin波を特定する因子
     2.4 減衰
     2.5 音響インピーダンス
     2.6 まとめ
     2.7 よく誤解される概念

第3章 対数と逆対数
     3.1 対数と逆対数の概念
     3.2 測定尺度
     3.3 さらに指数に関して
     3.4 逆対数と対数
     3.5 対数と逆対数の問題を解く手順

第4章 音の強さと音圧:デシベル
     4.1 音響パワーの絶対尺度と相対尺度
     4.2 音の強さ
     4.3 デシベル
     4.4 音圧
     4.5 dB ILとdB SPLの関係
     4.6 音圧の尺度単位
     4.7 基準値の変換
     4.8 独立音源からの音の強さを足し合わせる
     4.9 音の強さと音圧に関するデシベルのまとめ
     4.10 よく誤解される概念

第5章 複合波
     5.1 フーリエの定理
     5.2 周期波
     5.3 非周期波
     5.4 波形とスペクトル
     5.5 複合音波形の例
     5.6 複合波の音圧の尺度
     5.7 信号対雑音比
     5.8 よく誤解される概念

第6章 共鳴とフィルタリング
     6.1 共鳴
     6.2 共鳴曲線とフィルタ曲線
     6.3 音響インピーダンスと共鳴
     6.4 周波数選択システム:フィルタ
     6.5 フィルタのパラメータ(システム伝達関数)
     6.6 理想的なフィルタと現実的なフィルタ
     6.7 フィルタの種類
     6.8 フィルタの出力レベルの記述
     6.9 別の視点から見た雑音の種類
     6.10 よく誤解される概念

第7章 歪み
     7.1 周波数歪み
     7.2 過渡歪み
     7.3 振幅歪み

第8章 音の伝搬
     8.1 距離に対する音の強さの減衰
     8.2 反射
     8.3 屈折
     8.4 回折
     8.5 吸収
     8.6 音の伝達において生ずるその他の現象
     8.7 おわりにあたってのコメント
     8.8 よく誤解される概念

付録1:用語と記号
付録2:厳選された数式集


関連書
   音声の音響分析 音声聴覚のための信号とシステム 音声知覚の基礎
   言語聴覚士の音響学入門 臨床家のためのデジタル補聴器入門 聴覚過敏 よい聞こえのために


その他(音声・聴覚)のページへ
トップページ
弊社へ直接ご注文の場合はこちらから