言語聴覚士の音響学入門 (CD付き)

吉田友敬(名古屋文理大学助教授) 著
A5・208頁・定価(本体2,600円+税)
ISBN978-4-303-61040-1
初版2005年5月/第8版2015年4月発行


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 概 要
近年、言語・聴覚系の専門職を目指す文科系出身者が増加し、その方面の専門分野に関する初学者向けの解説書が求められている。しかし、音響学を含む多くの教科書は理工系の学生向けに書かれており、ページを開いたとたんに目に飛び込んでくる数式の羅列は、上のような学習者にとって大きな障壁となっている。ごく最近、このような事情に対応すべく、以前よりかなりわかりやすく解説した専門書が徐々に出版されつつある。ただ、それぞれが専門分野であり、翻訳書を中心としていること、若干の数学や物理の知識が前提とされていることなどから、これらの本に到達するためのガイドとなるような、総合的音響学の教科書が求められている。

筆者は、多くの文科系出身者が高校で物理を履修せず、数学においても微積分の基本的知識を持ち合わせない(あるいは忘れてしまった)という状況を前提に、リハビリ専門職などへの就職を希望する学生向けのコンパクトな音響学の教科書ができないものかと、模索してきた。幸い、筆者が専門学校で担当する音響学講義は、年々学生の需要に応えるものとなり、高度な数学をまったく使わず、なおかつ音声・聴覚分野の立ち入った部分までを扱うものとして、好評を得てきた。そこで、この講義内容をもとにして一冊の書物にまとめれば、上のような需要に対する一応の答えとなるのではないかと思い、著述を決意するに至った。

本書の執筆に当たっては、以下のことに留意している。
  1. 音の物理的性質について中学レベルから説き起こし、音声・聴覚の専門知識にとって必要最小限の数学的扱いを解説した。
  2. 聴覚分野の初学者が戸惑いやすい、デシベルについて、できる限り丁寧な解説をほどこした。
  3. いわゆる工学的な音響学分野だけでなく、臨床的に必要となる事柄との関連を考え、次の各分野の基本的知識を本書に含めた。これにより、多種の参考書を参照しなくても、本書のみで、音響学分野の必要な基礎知識の理解が得られるように配慮した。
    • 音響物理学(基本的な音波の性質)
    • 音の強さの尺度(各種デシベルの定義と実際)
    • 音のスペクトルの扱い
    • デジタル信号処理の基礎
    • 音響心理学
    • 音声音響学
とくに最後の音声音響学は、いままで音声学とのはざまでわずかに解説されていたもので、とりわけ音響学の観点から説明されたものはほとんど見あたらなかったように思う。試行錯誤の結果、筆者の音響学講義において一定の意義を持つようになった部分でもある。

また、何年も音響学の講義を担当してきて、多くの学生が、さまざまな音響的現象を知識としては知っていても、実際の音をイメージすることが必ずしもできないということが最近になってわかってきた。将来の専門職のためにも、耳を鍛えることは有意義である。筆者は、肝心の音自体を知ることの必要性を強く感じ、講義中にデモンストレーションで音を提示するのみにとどまらず、これらの音のサンプルをCDとして作成し、学生に配布して聴かせ、試験時に「リスニングテスト」まで実施したところ、その効果は絶大であった。本書にもこのような音のサンプルがあることが望ましいと考え、各種の音を納めたCDを付属させている。ぜひ、各自で音の不思議を体験してもらいたい。それぞれの音についての説明は本文中に対応するトラックを示して記述している。(「はじめに」より)
 
 目 次
第1章 音波の性質
     1. 波の基本的性質
        (1) 波長、周期、周波数
        (2) 音速と波長、周波数の関係
        (3) 縦波と横波
        (4) 進行波と定常波
        (5) 純音
     2. 定常波と共鳴
        (1) 弦の振動
        (2) 開管の共鳴
        (3) 閉管の共鳴
        (4) 外耳道、声道への応用
     3. 《発展》倍音と音階
        (1) オクターブ
        (2) 倍音と音階の対応関係
        (3) 純正律
        (4) 平均律
     4. うなり
     5. 《発展》ドップラー効果
     6. 回折
        (1) ホイヘンスの原理
        (2) 回折
        (3) 頭の陰影効果
     7. 反射と屈折
        (1) 反射
        (2) 屈折

第2章 音の強さの尺度
     1. 音圧と音の強さ
        (1) 音の強さと大きさ
        (2) 音圧
        (3) 音圧と音の強さの関係
     2. デシベル
        (1) 音の強さに対する感覚とデシベル
        (2) 対数(log)
        (3) デシベルの式
     3. デシベルの計算
        (1) 音圧比→dBに変換
        (2) dB→音圧比に変換
        (3) dB SPL→音圧を計算
     4. デシベルの基準値
        (1) 音圧レベル
        (2) 聴力レベル
        (3) 感覚レベル
     5. デシベルに関する補足事項
        (1) 平均聴力レベル
        (2) phon(フォン)
        (3) 音響利得

第3章 音のスペクトル
     1. 純音の式
     2. 音の種類
     3. スペクトルの意味と実例
        (1) 純音のスペクトル
        (2) 周期音のスペクトル
        (3) ホワイトノイズ
        (4) ピンクノイズ
        (5) バンドノイズ
        (6) 単一パルス(クリック音)
     4. スペクトル分解の原理
        (1) フーリエ級数
        (2) フーリエ変換
        (3) 音の種類とスペクトル
     5. 短音のスペクトル
        (1) 短時間スペクトル
        (2) 《発展》窓関数
     6. サウンドスペクトログラム
     7. 音のデジタル化
        (1) アナログとデジタル
        (2) データのサンプリング(標本化)

第4章 音響心理学
     1. 音の大きさの知覚
        (1) フェヒナーの法則
        (2) スティーブンスのべき法則
        (3) ウェーバーの法則
        (4) 外耳道内外における音圧の変換
        (5) 音の強さを弁別する仕組み
     2. 音の高さの知覚
        (1) 音の高さとオクターブ感覚、mel尺度
        (2) 短音の高さの知覚
        (3) 場所ピッチ
        (4) 時間ピッチ
        (5) 時間ピッチと場所ピッチの役割
        (6) 複合音の高さの知覚
     3. マスキング
        (1) マスキング量と周波数特性
        (2) 3種のマスカーによるマスキング
        (3) 臨界帯域
        (4) 非同時マスキング
     4. 両耳聴
        (1) 両耳の加算、融合
        (2) 方向知覚
        (3) MLD(masking level difference)
        (4) 先行音効果

第5章 音声音響学
     1. 母音の生成の仕組み
        (1) 音源フィルタ理論とは
        (2) 母音の音源(声帯の振動)
        (3) 声道の共鳴(フィルタ)
        (4) 放射特性
        (5) スペクトログラムによる表現
     2. 母音とフォルマント
        (1) 第1フォルマント
        (2) 第2フォルマント
        (3) 5母音と第1、第2フォルマント
     3. 鼻音とアンチフォルマント
     4. 子音とフォルマント遷移
        (1) 摩擦音
        (2) 破擦音
        (3) 破裂音
        (4) フォルマント遷移
        (5) ローカス(フォルマント開始周波数)
        (6) 鼻子音・接近音のフォルマント遷移
     5. 音素の連続による効果
     6. 総合分析
        (1) 分析例-1
        (2) 分析例-2
     7. 構音障害と音響分析

さらに勉強するために
言語聴覚士国家試験・模擬問題
CDに収録されている音・音声
索引
 
 CDの内容
1. 純音:440Hz
2. 純音:880Hz
3. 純音:1760Hz
4. 純音:3520Hz
5. 純音:7040Hz
6. 純音:14080Hz
7. 純音:15000Hz
8. 純音:16000Hz
9. 純音:220Hz
10. 純音:110Hz
11. 純音:55Hz
12. 純音:40Hz
13. 純音:30Hz
14. 純正律の「ドミソ」
15. 平均律の「ドミソ」
16. うなり:2Hz(440Hz+442Hz)
17. うなり:0.5Hz(440Hz+440.5Hz)
18. うなり:10Hz(440Hz+450Hz)
19. ドップラー効果:音源速度20m/s、ずれ10m
20. ドップラー効果:音源速度20m/s、ずれ1m
21. ドップラー効果:音源速度50m/s、ずれ10m
22. 名古屋鉄道パノラマカーによるドップラー効果
23. 純音を10dBずつ弱くした音の列(440Hz)
24. 純音を5dBずつ弱くした音の列(440Hz)
25. 純音を3dBずつ弱くした音の列(440Hz)
26. 純音を1dBずつ弱くした音の列(440Hz)
27. ホワイトノイズ
28. ピンクノイズ(1/fノイズ)
29. ブラウンノイズ
30. バンドノイズ:中心周波数8000Hz、帯域幅1000Hz
31. バンドノイズ:中心周波数4000Hz、帯域幅800Hz
32. バンドノイズ:中心周波数2000Hz、帯域幅300Hz
33. バンドノイズ:中心周波数1000Hz、帯域幅200Hz
34. バンドノイズ:中心周波数500Hz、帯域幅120Hz
35. バンドノイズ:中心周波数250Hz、帯域幅100Hz
36. バンドノイズ:中心周波数125Hz、帯域幅100Hz
37. クリック音
38. パルス列による音(パルスの頻度400Hz)
39. 方形波(400Hz)
40. 純音成分の第9倍音までを合成して方形波に近づけた音
41. 三角波(400Hz)
42. 純音成分の第9倍音までを合成して三角波に近づけた音
43. 短音:400Hz、100ms
44. 短音:400Hz、50ms
45. 短音:400Hz、10ms
46. 短音:400Hz、3ms
47. 方形窓(前半5回)とハミング窓(後半5回):400Hz、実効50ms
48. 図3-19、図3-20の音声:「世界の」
49. サンプリング周波数による音質の違い:44100Hz→16000Hz→8000Hz
50. 無限に上昇する音階
51. 無限に上昇する連続音
52. 無限に下降する音階
53. 15msのトーンバースト列(500Hz、562.5Hz、625Hz、666.7Hz、750Hz)
54. 6msのトーンバースト列(500Hz、562.5Hz、625Hz、666.7Hz、750Hz)
55. 2msのトーンバースト列(500Hz、562.5Hz、625Hz、666.7Hz、750Hz)
56. リプル雑音:400Hz、800Hz
57. リプル雑音:1600Hz、6400Hz
58. ホワイトノイズの断続:100Hz
59. ホワイトノイズの断続:150Hz
60. バーチャルピッチ:200Hz(基音と2倍音を欠いた音)
61. 200Hzの複合音
62. 1800Hz+2000Hz+2200Hzの純音を重ねた音
63. 1840Hz+2040Hz+2240Hzの純音を重ねた音
64. 結合音:1000Hz+1800Hz(1000×2−1800=200Hzを感じるかどうか)
65. バンドノイズによるマスキング:中心周波数440Hz、帯域幅120Hz
66. ホワイトノイズによるマスキング
67. 高周波側のマスキング:中心周波数3500Hz、帯域幅800Hz、信号音4000Hz
68. 低周波側のマスキング:中心周波数4000Hz、帯域幅800Hz、信号音3500Hz
69. バンドノイズ+信号音(信号音1000Hz、中心周波数1000Hz、帯域幅200Hz)
70. ノイズ+信号音近接(信号音1000Hz、中心周波数1000Hz、帯域幅200Hz)
71. 信号音+バンドノイズ(信号音1000Hz、中心周波数1000Hz、帯域幅200Hz)
72. 信号音+ノイズ近接(信号音1000Hz、中心周波数1000Hz、帯域幅200Hz)
73. 両耳ビート:左440Hz/右441Hzの場合、左1200Hz/右1201Hzの場合
74. 位相差による方向変化:左右45度、500Hz、2000Hz
75. 強度差による方向変化:440Hz、4000Hz
76. MLD:両耳に純音(同相)+ノイズ(同相)
77. MLD:両耳に純音(逆相)+ノイズ(同相)
78. MLD:右耳に純音+ノイズ
79. MLD:右耳に純音+両耳にノイズ(同相)
80. 図5-11の音声:「イエアオウ」
81. 図5-17の音声:鼻子音
82. 図5-19の音声:摩擦音
83. 図5-21の音声:破擦音
84. 図5-22の音声:破裂音「pa、ta、ka、ba、da、ga」
85. 図5-23の音声:破裂形「p、t、k」
86. /pa/、/ta/、/ka/から破裂部分を除いた音
87. 図5-25の音声:/ba/、/da/、/ga/のフォルマント遷移
88. 図5-28の音声:/na/と/da/のフォルマント遷移
89. 図5-29の音声:/ba/、/wa/、/ua/のフォルマント遷移
90. 図5-30の音声:/ga/、/ja/、/ia/のフォルマント遷移
91. 図5-32の音声:「どんどん利用してほしい」
92. 図5-33の音声:「誰にでもできるだろう」
93. 図5-34の音声:「猫が魚をくわえて」
94. 図5-35の音声:「一人暮らしの女性が自室で」
95. 図5-36の音声:「昔あるところに」
96. 図5-37の音声:「そうすると30分か1時間半」
97. 図5-38の音声:「ぜんざい、日曜日」
98. 音声サンプル(通常、2000Hz以上を除いたもの、1000Hz以下を除いたもの)
99. クリック音を右から左へ1万分の1秒ずつタイミングをずらした音


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