交易と冒険を支えた
航海術の歴史


J. B. ヒューソン 著
杉崎昭生(東京海洋大学名誉教授)訳
A5上製・360頁・定価(本体4,500円+税)
ISBN978-4-303-20060-2
日本図書館協会選定図書
初版2007年3月発行


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 概 要
海上で働いている人々にときどき疑問が起こることがある。古代の航海者たちは未知の海をどのようにして渡り、また帰港したのか、どんな海図を使用したのか、また最初にコンパスに頼ったのはいつだったのか。

船乗りを職業とする者にとっても、また昔の航海の記録にある話をたどる者にとっても、同じような疑問がしばしば起きる。

このような疑問に答えるためにこの本が生まれた。

膨大な年月の羅列的記述は可能な限り避けるようにした。技術の歴史をたどるときに、年月の羅列は、その段階的な発展の輪郭をあいまいにしてしまう。一つの器具の出現あるいはその発想の生まれた時と場所を特定するために、不完全である他の器具や考えの成果に依存することはよくある。この本の目的は大洋航海の技術の発展をさかのぼって明らかにすることである。とはいえ、すべての発明と改良を成し遂げた人々を特定することは不可能であると同時に、たとえ名前や時代がわかったとしても、そのとき以前にはなかった、あるいは他の誰かが同じ方法を以前に試みたことがなかったということを受け入れたわけではない。結果的には無駄であったが、多くの権威者に意見を求めてきた。しかし何世紀にもわたり、実質的にはヨーロッパ諸国と北アメリカの多くの人々が航海の進歩に寄与した、と言っても言い過ぎにはならないだろう。この本を許容される大きさにおさめるため、多くの名前を削除してきた。道しるべとなる原則の一つは、海員のために書かれたさまざまな本の中にある技術動向をたどることであるが、それらの著者はしばしば高度の航海者であり、新しい方式についての海上試験を完了すれば、一般の航海者にそれらを推薦してきた。実務者が不安定な海上で試みた新しい方式について語りはじめたり、あるいは改良について提唱しはじめるとき、そのときがその導入を伝えられるときであって、陸上で学者が最初にその考えを思いついたときではない。この原則は疑問が生じた際にも適用されているが、そのことは、数学者や科学者が、海の利用者の利益のために、ずっと努力をしてき、またいまでも努力を続けていることに対して、海員が感じている、深い、心からの称賛と感謝を損なうものではない。

大洋航海の発展、すなわちエリザベス朝時代にそう呼ばれた正規の水先案内の発展は、数学的な理論を大洋航海の実務に適用する物語である。10世紀も前の古代ノルウェー人のグリーンランドやラブラドルへの航海は、航海王ヘンリー王子がサグレスに航海学校を設立した時代の15世紀に理解された意味での航海術の知識をもとに行われたものと同じではない。ノルウェー人のシーマンシップ、特定の太平洋の島の住民に利用された独創的な技術、およびその他の東洋の人々の方法は、技術全般の進歩にはほとんど寄与しておらず、どちらかと言えば西洋の航海者の懸案事項には実際的な解決をもたらさない、それぞれの国内的、沿岸的あるいは季節的な航海術に止まっていたので、この本では扱わない。

科学的な大洋航海の始まりと英国の海事事業の誕生とは期を同じくしていたが、初めの頃、英国の航海者は、最初の成功者の象徴であるコロンブスの方法を見習うことはなかった。危険を冒して陸から遠くへと行き、そして戻る航路を知りえた航海者は、記録にはなくとも初期には数多く存在したに違いないが、最初に、コンパス、緯度を得るための天体の利用、距等圏航海算法や推測航法への増大する自信をみなぎらせていたコロンブスに、敬意を表すべきである。

アメリカ発見に続く世紀では、英国の航海者はしだいに正規の水先案内の技術を身につけ、英国の南に位置して英国に教えるべき立場だった国の仲間と同じレベルになった。地理的な位置が良いことで、英国は北大西洋を渡ったり北極海に入るのに良く適っていて、英国の航海者はそれらの海域で、自己の技術を実施したり発展させたりした。そのときから彼らの方法や進歩は、その民が海を目指すすべての西欧の国の中で、大洋航海の実務の、実質的に正しい姿を示している。(「著者序文」より)
 
 目 次
《Part 1》航海手段の要

[Chapter 1]海図と水路誌
        ポルトラン海図
        本初子午線
        ラター(水路誌)
        彫版海図と地図帳(アトラス)
        平面海図
        メルカトル海図
        英版海図

[Chapter 2]コンパス
        天然磁石(ローデストーン)
        コンパスの導入
        初期の開発
        磁気
        傾差
        偏差の修正
        その後のコンパスの改良
        自差の研究
        自差修正
        近代的なコンパス
        ジャイロコンパス

[Chapter 3]航海計器
        アストロラーベ
        クロススタッフ(十字儀)
        バックスタッフとデービス四分儀
        ハドレーの四分儀
        六分儀
        四分儀と六分儀への人工水平儀の適用
        航海における地球儀の利用


《Part 2》大洋航海}

[Chapter 1]序論

[Chapter 2]緯度の測得
        近子午線観測による緯度
        北極星観測による緯度

[Chapter 3]コンパスの偏差
        偏差の測得の方法
        高度方位角
        時角による方位角
        偏差とその利用の研究

[Chapter 4]測程索とログブック
        距離と速力の測定
        ジャーナルとログブック
        風圧差(リーウェイ)
        潮流(カレント)
        原文ログブック
        ログブックに記録されたデータの利用

[Chapter 5]緯度と推測航法による航海
        針路の航進
        海図上の位置記入と針路の設定
        容易な針路設定のため使用される斜方子午線
        平面海図と平面航法
        平面航法
        斜行航法
        距等圏航法
        中分緯度航法
        大圏航法
        測鉛索
        音響測深

[Chapter 6]経度
        木星の衛星の食による経度
        月による恒星の掩蔽による経度
        月の観測による経度
        月距の改正
        経度の指標としてのメキシコ湾流の利用
        クロノメータによる経度
        サムナー線
        マーク・セント・ヒレール

[Chapter 7]電子航法
        コンソル
        レーダ
        ジー(Gee)
        ロラン
        ロランC
        デッカ航法システム
        航行衛星システム(トランシット衛星システム)
        Navstar/全世界位置決定システム(GPS)


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