航法理論詳説

石田正一 著
A5・380頁・定価(本体3,600円+税)
ISBN978-4-303-20680-2
初版2015年5月発行


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 概 要
扱っている内容について大きく4つのカテゴリーに括れば,まず,1つ目は航法および測位計算に必要な地球楕円体についての幾何学,2つ目は測位計算法,3つ目を測位誤差論,そして第4を航法に関係する力学にできるでしょうか。

具体的には,まず第1の地球楕円体についての幾何学は,航法および測位計算に不可欠な基礎知識です。しかし内容には難解なものが含まれ,そのすべてを理解することを目指したわけではなく,その成果である数式を利用することを目的としています。

第2の測位計算には,地文航法と天文航法における位置決定計算方法,そして双曲線航法の測位計算やGPS測位計算が含まれます。いずれもPCなしで計算できる形式ではなく,通常の航海の教科書では見ることのないスタイルかと思います。しかし,すべてに計算例を示してありますので理解は意外と容易と思います。

次の測位誤差論では,航法における誤差に関する評価や表現方法を計算例とともに理論的に説明しています。内容は誤差三角形についての理論的扱いを詳細に論じ,DOPと誤差楕円について理論的説明を尽くしたものです。

そして,第4のカテゴリーの力学とはジャイロコンパスや慣性航法についての運動方程式の説明です。一般的な航海書では見かけない力学的説明をしています。

扱った項目をもう少し詳細に説明しますと,特筆すべき内容が含まれていることがわかります。たとえば,第3章「航程線航法」における計算方法については著者独自の説明をしてありますが,学校などでは教授されることのない内容になろうかと思いますし,第5章「測高度改正」においては,説明も理論的かつ詳細であり,従来の航海教科書では得られない内容のもので,深く掘り下げてあります。また,第7章「夾角天測法」において,航海の教科書で扱われることのなかった低緯度海域における緯度を求める手法を解説してあります。そして,第8章において現代航法の教科書では消滅してしまった古典的手法である「月距法」について例題を示しつつ解説してあります。

ジャイロコンパスや慣性航法に関する力学的説明については,まるで力学の教科書ではないかと言われそうですが,これらは日本語による航法の教科書などではほとんど扱われていないことから,著者の能力を顧みず無理を承知で「慣性系」と呼ばれる力学の基礎概念から書き出し,とくに,難しい慣性航法の方程式に「たどりついた」ときの感動を味わうことができるような内容とすることを目指したものです。

また,日本語による航法の教科書で扱われることがないといえば,極点や極圏での航法も同様です。第10章で極圏での天文航法の実例や慣性航法による潜水艦航行の実際を記述してありますので,興味をもって読んでいただけるかと思います。

ところで,経験から感じることですが,本書で扱った数学のスタイル,すなわちベクトルやマトリックス形式での表現に慣れていない方もあろうかと思います。最小自乗法での解を求める計算にマトリックス形式を利用しましたが,式を見ただけでは複雑で難しそうに思われるかもしれません。しかし,実際の計算に表計算ソフトを利用すれば非常に簡単に解が得られるのです。この数学形式を利用しない手はありません。第7章の天測計算において,理解しやすい説明に努めていますので,まずはご一読ください。「目から鱗」かもしれません。

他方,潮汐理論における60に及ぶ分潮による展開式については,学生時代からずっと理解したいと考えていたことでしたが,A. T. Doodsonによる名著「Admiralty Manual of Tides」を読むことができずにいました。潮汐の教科書の参考図書に必ずリストアップされるものですが,OPACで検索しても所蔵大学図書館が見つけられないのです。これには驚きました。本書の第17章「潮汐」では分潮項を実際に計算してDoodsonのTableに現れる数値を確認してみました。やっと潮汐の分潮について理解できたような気分になりました。Admiralty Manualを読まなくても本書により何を計算しているのかが理解できるものと思います。また,同章では潮汐調和定数の利用により各港の潮汐計算ができることを概略説明してありますので,海上保安庁発行の「潮汐表」の舞台裏が見えることになります。

なお,天文航法に関する章を読むに当たっては,海事系以外の理工系の学生諸君のように天測の基礎的知識を必要とする方もあることを想定し,付録で基礎的説明をしてありますので,必要でしたら付録を先に読まれることをお勧めします。

最後に,現在日本で市販されている「航海専門書」による学習だけでは,海上保安庁発行の「天測暦」や「天測計算表」に解説されている内容を理論的に理解できない状況になりつつあると感じます。いわゆる航海理論書絶版の現実があります。本書が一部とはいえ,その理論的理解を可能にすることを目標に記述内容も充実させたことを強調しておきたいと思います。(「序」より抜粋)
 
 目 次
第1章 地球の形状と位置表示
1.1 地球楕円体
1.2 緯度
   1.2.1 測地緯度による2次元座標
   1.2.2 地心緯度による2次元座標
1.3 緯度・経度からデカルト座標への変換と逆変換
   1.3.1 緯度・経度からデカルト座標への変換
   1.3.2 デカルト座標から緯度・経度を求める
   1.3.3 計算例
1.4 Tokyo DatumからWGS84 Datumへの変換

第2章 楕円体の幾何学
2.1 楕円体の曲率半径
   2.1.1 子午線方向の曲率
   2.1.2 平行圏方向の曲率
2.2 子午線弧長と平行圏弧長
   2.2.1 子午線弧長
   2.2.2 平行圏弧長
2.3 測地線
2.4 Loran-Cの距離公式

第3章 航程線航法
3.1 航程線航法計算式
3.2 真球上の航程線
   3.2.1 微小直角三角形による幾何学的考察
   3.2.2 微積分応用による考察
3.3 回転楕円体上の航程線
3.4 回転楕円体上の航程線航法の計算法
   3.4.1 計算例1(針路・距離を与えて到達地を求める計算)
   3.4.2 計算例2(2地点の経緯度を与えて針路・距離を求める計算)

第4章 測地線の解
4.1 Jordanの式による第1課題の解法
4.2 T. Vincentyによる第1課題の解法
4.3 Jordanの式による第2課題の解法
4.4 T. Vincenty による第2課題の解法
4.5 検算用データ

第5章 測高度改正
5.1 天文気差(Refraction)
   5.1.1 天文気差(大気差)の近似式
   5.1.2 Bennettの算式
   5.1.3 Almanac for Computers 1976による算式
5.2 眼高差(Dip)
   5.2.1 視水平距離と眼高差を求める簡略法
   5.2.2 水準器による水平
5.3 視差(Parallax)
   5.3.1 地球楕円体における視差改正
5.4 視半径(Semi-diameter)
   5.4.1 月の視半径増加
5.5 日出時刻
   5.5.1 均時差(Equation of Time)
5.6 太陽真出没時の高度

第6章 緯度の決定
6.1 北極星高度緯度法
   6.1.1 計算式の導出
   6.1.2 第3表a2の導出
6.2 子午線高度緯度法
   6.2.1 計算公式
   6.2.2 子午線正中時
   6.2.3 正中時の予測と時刻改正の例解
6.3 近子午線高度緯度法
   6.3.1 計算式の導出
6.4 極大高度の問題
   6.4.1 極大高度を求める式の導出
   6.4.2 極大高度の瞬間と正中時との時間間隔

第7章 天測
7.1 最小自乗法の適用
7.2 Severanceによる解
7.3 NavPacにおける方法
7.4 Kaplanによる方法
7.5 例解
   7.5.1 Severance法による例解
   7.5.2 最小自乗法による例解
   7.5.3 太陽子午線高度を含む太陽高度の隔時観測
   7.5.4 NavPacによる例解
   7.5.5 Kaplan法による例解
7.6 夾角天測法
   7.6.1 概説
   7.6.2 例解
7.7 Stanleyによる推測位置不要な天測位置決定法
   7.7.1 計算法概説
   7.7.2 例解
7.8 デカルト座標による天測位置決定法
   7.8.1 計算法概説
   7.8.2 例解

第8章 月距法
8.1 概要
8.2 手法
   8.2.1 観測
   8.2.2 計算法
8.3 月距法例題

第9章 天測暦の翌年における使用法

第10章 極圏における航法および極点での位置決定
10.1 極圏(高緯度地域)での位置決定
10.2 極圏(高緯度地域)における方位および針路
10.3 極圏における位置決定(plotting)
10.4 極圏航法の実例
10.5 directional gyro
    10.5.1 directional gyroの機能
    10.5.2 大圏航路の変針角
    10.5.3 directional gyroによる航法

第11章 双曲線航法における位置決定法
11.1 観測方程式
    11.1.1 測地線長の公式
    11.1.2 電波伝搬時間を求める実験式
    11.1.3 方位を求める式
    11.1.4 測位計算例

第12章 GPSによる測位
12.1 GPSによる測位計算法
12.2 衛星位置計算
    12.2.1 衛星の地心座標位置計算法
12.3 GPS測位計算例
12.4 GPS衛星位置計算例

第13章 地文航法
13.1 1物標の方位と距離からの位置決定
13.2 複数局の距離と方位からの位置決定
13.3 複数局の方位測定による位置決定

第14章 誤差三角形
14.1 偶然誤差による誤差三角形
14.2 symmedian pointについて
14.3 誤差三角形から最確位置を求める
14.4 最小自乗法による解との関係
14.5 定誤差を求めるための観測方程式
14.6 誤差三角形から最確位置を作図により求める方法
14.7 誤差三角形の外に最確位置がある可能性

第15章 Dilution of Precision
15.1 DOP
15.2 レーダ測位,双曲線航法および天測におけるDOP
    15.2.1 レーダ測位におけるDOP
    15.2.2 双曲線航法(Loran-C)による測位のDOP
    15.2.3 天測におけるDOP
15.3 DOP計算例
    15.3.1 GPSにおけるDOP
    15.3.2 レーダによる距離測定におけるDOP
    15.3.3 Loran-CにおけるDOP
    15.3.4 天測におけるDOP

第16章 測位誤差の扱い,error ellipseの導入
16.1 測位誤差
    16.1.1 2本の位置の線による測位の場合
    16.1.2 3本以上の位置の線による測位の場合
    16.1.3 距離を観測した場合の観測方程式
    16.1.4 方位を観測した場合の観測方程式
16.2 観測方程式の解法
16.3 観測方程式の統計的扱い
16.4 error ellipse
16.5 NavPacにおける天測位置の線の場合
16.6 例題:error ellipseの求め方
    16.6.1 距離および方位を測定した場合
    16.6.2 距離のみ測定した場合
    16.6.3 方位のみ測定した場合
    16.6.4 2物標の距離のみ測定した場合
    16.6.5 天測の場合
    16.6.6 レーダ測距の場合
    16.6.7 クロスベアリングの場合
    16.6.8 双曲線航法におけるerror ellipse計算
    16.6.9 GPS測位のerror ellipse計算

第17章 潮汐
17.1 平衡潮汐理論
    17.1.1 起潮力
    17.1.2 平衡潮汐論と平衡潮汐
    17.1.3 潮高の式におけるθの展開
    17.1.4 分潮
    17.1.5 潮汐ポテンシャルの具体的展開式
17.2 潮汐調和定数の利用

第18章 Mechanical Gyrocompass
18.1 力学基礎
    18.1.1 剛体の角運動量
    18.1.2 慣性モーメント計算例
    18.1.3 回転角速度によるベクトル
    18.1.4 相対速度,相対加速度
    18.1.5 回転座標系におけるベクトル
    18.1.6 オイラーの運動方程式
    18.1.7 座標変換,Euler's angle
    18.1.8 角速度の変換
18.2 対称コマの運動
18.3 正則歳差運動
    18.3.1 プレセッション計算例
18.4 ジャイロコンパスの指北原理
18.5 速度誤差
18.6 damping
    18.6.1 偏心接触点によるdamping
    18.6.2 damping oil vesselによるdamping

第19章 慣性航法における運動方程式の導出
19.1 古典力学と慣性系
    19.1.1 慣性系と加速度座標系
    19.1.2 慣性系と回転する座標系
19.2 運動(回転)座標系
    19.2.1 地球表面での運動
19.3 航行体の運動方程式
    19.3.1 航行体の運動方程式の初等的求め方
19.4 慣性航法の運動方程式
    19.4.1 慣性航法の運動方程式の具体的展開

付録A 天文航法基礎概説と天文三角形の余弦公式
A.1 天文航法概説
A.2 余弦公式
   A.2.1 天文三角形から球面三角形へ
   A.2.2 天測計算表の計算式

付録B 方向余弦行列の時間微分を応用した慣性航法方程式の導出
B.1 無限小回転
B.2 方向余弦行列(direction cosine matrix:DCM)の時間微分
B.3 慣性航法の運動方程式を導く


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