聴覚過敏 仕組みと診断そして治療法

デービッド・M・バグリー/ゲルハルト・アンダーソン 著
中川 辰雄(横浜国立大学教育人間科学部 教授)訳
A5・176頁・定価(本体3,500円+税)
ISBN978-4-303-61070-8
初版2012年6月発行


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 概 要
これまで二十数年間、聴覚障害者の現有する聴覚を活かした指導や支援について教育研究や臨床活動を行ってきました。最近、通常の学級におけるLDやADHDそれに高機能自閉症に関する文部科学省の調査にもあるように、聞こえは正常範囲にあるにもかかわらず、聴覚を活かした指導や学習が困難な子どもたちが目立っています。私たちにはそれほど気にならない音や声に異常に反応して、学習活動が成立しにくい子どもたちが、教室に少ないながらもいることが明らかになってきています。私自身も特別支援学校とかかわるようになって、聴覚障害よりも聴覚過敏のある子どもたちが低年齢を中心としてかなりの数に達していることに気づかされました。

日本では耳鳴りの研究や臨床が医学部の耳鼻咽喉科を中心として行われていますが、それに比べて聴覚過敏に関する研究や実践活動はまだ少ないのが現状です。言語聴覚士の養成においては、まだ分野としても確立されていません。とくに、小児における聴覚過敏は自閉症におけるその徴候が顕著であることが以前から言われてきた割には、これといった手段が講じられていないのが現状なのではないでしょうか。そうしたなか、臨床心理士によって聴覚過敏のある自閉症者への臨床活動が行われているのは注目に値します。こうした状況において本書を刊行する意味は大きいのではないかと思っています。本書はその副題にもあるように、聴覚過敏の仕組みと診断と治療法について書かれた世界的にも例を見ない包括的な書籍であるといえます。

今まで聴覚過敏があると耳栓をしたりノイズキャンセリングヘッドホンを用意したりして、音を避けることが本流のように考えられてきた節がありました。しかし聴覚過敏の仕組みから考えると、むしろ音に段階的に対峙することも重要な選択肢の一つであることが本書から気づかされます。また、聴覚過敏には国民性も反映しているかもしれません。西洋社会に比較して、アジア・アフリカ社会ではそれほど一般的に聴覚過敏が取りざたされていないことも事実です。これを契機に日本においても聴覚過敏の理解が進み、聴覚過敏で悩んでいる人たちが少しでも適応的な生活が送れることを期待したいと思います。

本書を翻訳するに当たり、専門用語については対訳一覧を設けました。また本文を読んだだけでは理解しにくい箇所については「訳注」と「解説」を各章末に付けました。とくに解説は訳注よりもさらに踏み込んだ説明を試みています。(「訳者まえがき」より抜粋)
 
 目 次
第1章 導入
     定義
     要約

第2章 罹患率
     一般における雑音の過敏性
     聴覚過敏の罹患率調査
     特定の集団における聴覚過敏
     要約と将来の研究の方向性

第3章 仕組みとモデル
     生化学モデル
     聴覚遠心性神経の機能障害
     中枢の聴覚利得
     可塑性の役割
     ジャストレボフの神経生理学的モデル
     心理学的な仕組みとモデル
     社会学的仕組み
     要約

第4章 評価
     履歴
     聴力検査
     不快な大きさの検査
     診断的オージオロジーの手続き
     重症度の評価
     影響の評価
     学際的な評価と結論

第5章 聴覚過敏の臨床的側面
     精神医学的診断
     医学的問題
     音響ショック
     低周波数の環境騒音についての苦情
     要約

第6章 認知行動療法(CBT)
     導入
     治療手続き
     特別な配慮
     実証的支援
     オージオロジーの実践への心理療法の応用
     要約

第7章 聴覚過敏のための音響療法
     聞こえの保護
     音響療法アプローチ
     聴覚過敏に対する音響療法の効果に関する根拠
     自助とピンクノイズ
     要約

第8章 結論


関連書
   臨床家のためのデジタル補聴器入門 よい聞こえのために 言語聴覚士の音響学入門
   音声の音響分析 音声・聴覚のための信号とシステム 音入門 音声知覚の基礎

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