事故調査のための口述聴取法

仲村 彰(航空自衛隊 航空安全管理隊)著
A5・128頁・定価(本体1,600円+税)
ISBN978-4-303-72979-0
初版2015年9月発行


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 概 要
 新聞やニュースで目にするとおり、航空、船舶、鉄道、医療など、さまざまな分野で、事故はしばしば発生している。それらの事故を調査するために何をしたらよいかと問われたならば、事故調査とはまったく縁のない人でも、事故の当事者や目撃者に面接をし、情報収集することを思いつくであろう。

 このような面接による事故に関する情報収集、すなわち口述聴取は基本的な事故調査方法の一つであり、実際に、世界中の事故調査の専門機関では、どんなに物理的な記録(航空機のFDR(Flight Data Recorder:操作や計器の数値を記録する、いわゆるブラックボックス)など)の技術が進んでも、口述聴取を行っている。

 口述聴取は、基本的な調査方法ではあるが、単に事故の関係者から話を聞くというだけでなく、技術が必要で、適切な技術を用いるかどうかで数十%も情報量が変化する。一方、事故調査における情報源は、残骸やレーダー、FDRなど、さまざまなものがあるためか、事故調査方法に関する資料に口述聴取を中心に説明しているものはない。

 そこで、口述聴取について、理論から、実際にどのように行うべきかという実践まで、体系的に述べたのが本書である。

 本書で述べる口述聴取の位置づけは、同種の事故を防止するために行われる安全目的の事故調査に用いるものであり、事故の当事者などの責任を追及するためのものではない。したがって、自供させる技法ではなく、聴取対象者の持つ記憶からできるだけ正確かつ多くの情報を引き出すための技法を説明する。そして、その技法の心理学的根拠となるのが認知面接(Cognitive Interview)である。

 認知面接の歴史について簡単に説明すると、1980年代に、記憶の特性を踏まえ、事件の目撃者から情報を引き出すための捜査面接として、FisherとGeiselmanにより開発された。

 当初の認知面接は、「自由報告(悉皆報告)」「イメージによる状況の再現(文脈再現)」「さまざまな時間順序の再生」「視点の変更」の4つの教示のセットから構成されていた。

 このオリジナルの認知面接は、記憶の観点から開発されたが、開発者らは捜査官と被面接者の社会的関係が情報量に影響することに気づいた。そこで、対人コミュニケーションの手法を組み込んだものが強化認知面接(Enhanced Cognitive Interview)である。

 強化認知面接は、学術的に検証されたものではあったが、近年の研究では、「さまざまな時間順序の再生」と「視点の変更」については必ずしも効果的ではないという結果が得られていること、また実場面を考えると時間がかかるという問題点があることから、これらの教示を省略した修正版認知面接(Modified Cognitive Interview)が提唱されている。

 そして、本書についても修正版認知面接を事故調査における口述聴取法として適用している。

 本書は口述聴取をどのようにして行うのかについて述べるものではあるが、何を質問するかについて細かくは述べていない。当然ではあるが、分野、職種によって聞く内容が異なるからである。そのため本書は、自分の業務には精通しており、どのような問題によって事故が発生することがあるのかはある程度認識しているものの、口述聴取についての知識は持っていない人を対象としている。

 また、事例などは、著者の専門である航空分野の例を用いて説明していることが多いが、本書は航空事故調査のみではなく、事故調査一般に当てはまる。実際、認知面接は、記憶から情報を引き出すという意味では、とくに分野にかかわらないことから、アメリカの調査機関であり、船舶や鉄道事故も扱うNTSB(National Transportation Safety Board:国家運輸安全委員会)においても教育されている。

 読者は自分の分野に当てはめて、口述聴取を実施してもらいたい。

 本書は理論から実践までを網羅的に記述しており、何をするのかだけでなく、口述聴取における注意点や管理面などについて、なぜそうするのかまで理解できるようにしている。

 そして、本書は教材として構成されており、学習目標や練習問題が提示されている。練習問題は、読者によっては面倒と思われるかもしれない。しかし、実際の口述聴取では、本書を見ながら実践することはできないので、極力練習問題に取り組み、自分で考え、理解を深めることを推奨する。

(「はじめに」より抜粋)
 
 目 次
第1章 口述聴取とその重要性
     1.1 口述聴取とは
     1.2 口述聴取の重要性
     1.3 口述聴取法の重要性

第2章 口述聴取に影響を与える要因
     2.1 導入
     2.2 聴取対象者の要因
     2.3 調査員の要因
     2.4 まとめ
     練習問題

第3章 口述聴取法
     3.1 導入
     3.2 聴取開始時から着意すべき事項
     3.3 ラポール(相互信頼感)の形成
     3.4 記憶の喚起法
     3.5 イメージ的な記憶
     3.6 イメージに関する質問
     3.7 その他の記憶喚起法
     3.8 その他の口述聴取の技術
     3.9 聴取中に注意すべき事項
     3.10 してはいけない質問
     3.11 聴取終了時
     3.12 本当でない口述
     3.13 子供に対する口述聴取
     3.14 まとめ
     練習問題

第4章 口述聴取の管理
     4.1 導入
     4.2 聴取前の準備
     4.3 速やかな分離
     4.4 聴取の時期
     4.5 聴取対象者の状態
     4.6 調査員の人数
     4.7 複数回の口述聴取
     4.8 聴取する調査員の選出
     4.9 聴取対象者の人数
     4.10 聴取場所
     4.11 口述聴取の部屋
     4.12 聴取対象者に会うまでの情報収集
     4.13 服装
     4.14 座る位置
     4.15 対人距離
     4.16 質問内容のリスト化
     4.17 聴取時間
     4.18 多くの目撃者
     4.19 第三者の参加
     4.20 電話での口述聴取
     4.21 テープ起こし
     4.22 まとめ
     練習問題

第5章 口述内容に対する考え方
     5.1 導入
     5.2 事故調査における口述聴取内容の位置づけ
     5.3 確信度
     5.4 まとめ
     練習問題

資料:口述聴取の流れ
 
 著者紹介
仲村 彰(なかむら あきら)

1996年 関西学院大学文学部心理学科卒業
1998年 関西学院大学大学院文学研究科博士課程前期課程修了
防衛技官(研究職)として航空自衛隊入隊
航空安全管理隊へ配属され,現在に至る

航空事故調査の実務回数多数
米空軍のInternational Flight Safety Officer Course,Aircraft Mishap Investigation & Prevention Course修了

〔専門分野〕ヒューマン・ファクターズ,産業・組織心理学,インストラクショナル・デザイン

〔学会活動〕日本人間工学会,産業・組織心理学会,安全工学会,医療の質・安全学会会員


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