シネシス

―生産性、品質、安全、信頼性を統合した組織の変化マネジメント

エリック・ホルナゲル 著
北村正晴/狩川大輔/高橋信 訳

Safety-IIやレジリエンスエンジニアリングの提唱者として知られる著者が、シネシス(synesis、対象を統合する)という新しい概念を導入し、社会技術システムを基盤とする組織を対象として、断片化された視点を超え、VUCAの時代と呼ばれる不透明さに満ちた現実に対応するための、変化マネジメントの方策について考察する。

書籍データ

発行年月 2023年2月
判型 A5
ページ数 224ページ
定価 2,970円(税込)
ISBNコード 978-4-303-72999-8

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概要

 今日、大規模な組織、企業、社会機関の複雑化が進んでおり、モノリシックな思考に基づくマネジメントアプローチでは対処が困難になっている。ほとんどの業界やサービスの組織は、生産性、品質、安全など、単一の観点から(または組織のサイロに存在する別々の視点から)パフォーマンスを見ている。品質は安全とは別に扱われ、生産性とも別に処理される。サイロ化された思考は短期的には便利かもしれないが、特定の視点からだけでは、何が起こっているかの一部しか明らかにされないことを認識すべきである。変化をマネジメントし、組織がその業務において優れていることを確かなものとするためには、組織がどのように効果的に機能するかについて統合的な視点を持つことは欠かせない要件である。
 シネシスは、組織が意図したとおりに活動を遂行するために必要な優先順位、視点、および実践行動の相互に依存する集合を表す。このシネシスは、変化マネジメントのパラダイムを特徴づける関心対象、視野、および時間の断片化を克服する方法を示している。この本は、生産性、品質、安全、信頼性を個々に独立した課題としてではなく、これらすべてをまとめて考察し、なぜそれらを統合して扱うべきか、実際にそれをどのように行うかについても述べる。(序文「シネシス」より)

目次

第1章 断片化された視点
 1.1 序論
 1.2 生産性,品質,安全,信頼性
 1.3 断片化された視点の原点
 1.4 扱いやすい,扱いにくい,ならびに絡み合うシステム

第2章 断片化された視点の歴史的理由
 2.1 序論
 2.2 生産性
 2.3 品質
 2.4 安全
 2.5 信頼性
 2.6 共通のレガシー

第3章 断片化された視点の心理的理由
 3.1 序論
 3.2 心理的要因による断片化の結果
 3.3 シネシス(Synesis)―深さより広さ優先

第4章 変化マネジメントの基礎
 4.1 序論
 4.2 航海のメタファー
 4.3 定常状態マネジメントと変化マネジメント
 4.4 変化マネジメントの神話

第5章 断片化された変化マネジメント
 5.1 序論
 5.2 生産性をマネジメントする
 5.3 品質をマネジメントする
 5.4 安全をマネジメントする
 5.5 信頼性をマネジメントする
 5.6 変化マネジメントを考える際の断片化
 5.7 変化の必要性
 5.8 断片化がもたらす課題

第6章 シネシス的な変化マネジメント
 6.1 序論
 6.2 関心対象の断片化を扱う
 6.3 視野の断片化を扱う
 6.4 時間の断片化を扱う
 6.5 システムに変化を与える際の基本的ダイナミクス

第7章 必要な知識のネクサス
 7.1 序論
 7.2 システムに関する知識
 7.3 変動性に関する知識
 7.4 パフォーマンスパターンに関する知識
 7.5 結びの言葉

プロフィール

エリック・ホルナゲル(Erik Hollnagel)
ヨンショーピン大学(スウェーデン)の患者安全学上級教授、マッコーリー大学(オーストラリア)客員教授。大学、研究センター、多くの国のさまざまな産業分野で多様な問題の解決に貢献している。安全と複雑なシステム分析の分野で国際的に認められた専門家であり、レジリエンスエンジニアリング、レジリエントヘルスケア、Safety-IIなどの学術分野を創出することにも貢献してきた。27冊の本の著者/編集者であり、500以上の論文と書籍の章を執筆している。

北村正晴
1942年生まれ。東北大学工学部通信工学科卒。同大大学院工学研究科原子核工学専攻博士課程修了。同大学助手、助教授を経て、1992年東北大学工学部教授。2002年から同大学大学院工学研究科技術社会システム専攻教授を兼務。2005年定年退職、東北大学名誉教授。現在、(株)テムス研究所代表取締役所長。専門は、大規模社会技術システムのヒューマンファクターと安全性向上、Safety-IIベース安全探究方法論など。

狩川大輔
1977年生まれ。東北大学大学院工学研究科技術社会システム専攻博士課程後期3年の課程修了。博士(工学)。同大学産学官連携研究員、助教、独立行政法人電子航法研究所(当時)研究員などを経て、2016年4月より東北大学大学院工学研究科技術社会システム専攻准教授。専門は、航空システムを中心とした大規模複雑システムの安全、Safety-IIとレジリエンスエンジニアリング。

高橋 信
1964年生まれ。1986年東北大学工学部原子核工学科卒業。1991年東北大学工学研究科原子工学専攻博士課程修了。工学博士。1992年京都大学原子エネルギー研究所助手。1996年東北大学大学院工学研究科量子エネルギー工学専攻助手、2000年同准教授、2012年8月東北大学大学院工学研究科技術社会システム専攻教授。専門は、大規模システムの安全、ヒューマンインタフェース設計と評価、航空システムのヒューマンファクター、脳機能イメージングの工学応用。